マージンたったの5ミリ!! 超ド級マシンを積み込む積載車の匠に密着する

マージンたったの5ミリ!! 超ド級マシンを積み込む積載車の匠に密着する

 行動制限なしのゴールデンウイークが終わり、自動車業界はイベント真っ盛り。全国各地でオフ会やサーキットイベント、モータースポーツなど、さまざまなイベントが行われています。カスタムカー関連のイベントで必ず見かけると言っても過言ではないのが、出展社のデモカーやレーシングカーを運搬する積載車。

 ごくごく一般的なクルマの輸送であれば、特別な技術が求められることはありませんが、ド派手なカスタムカーを積む場合は事情が異なります。そこで日常的にチューニングカーを運んでいるスペシャリストに密着し、技術とノウハウを取材させてもらいました。

文、写真/奥野大志(ゴリ奥野)、取材協力/モーターファンフェスタ2022

【画像ギャラリー】レア画像あり!! SPLメイドの積載車と積み込み風景(7枚)画像ギャラリー

ベースとなる積載車もカスタムメイド

山本さんとダイナ、そして今回運んだGRヤリス。荷主はバリスのエアロパーツを装着したガレージGフォースのGRヤリス<br>
山本さんとダイナ、そして今回運んだGRヤリス。荷主はバリスのエアロパーツを装着したガレージGフォースのGRヤリス

 取材にご協力いただいたのが、自動車関連企業のサポートを行う会社を経営している山本晃司さん。前職は自動車関連の出版社ということもあり、幅広い人脈とネットワークを活かして、さまざまなビジネスを行っています。

 積載車は通算2台目となるトヨタのダイナ(2トン)。最初は地元のディーラー案件の回送用に導入しましたが、古巣から撮影用車両の輸送依頼を受けるようになり、スペシャルマシンの案件が増加。現在も企業サポートの一環として、多くの車両を運んでいます。

 山本さんのダイナは一見すると普通に見えますが、細部には特殊車両を積むための工夫がいっぱい。荷台は斜めに降りるタイプではなく、地面に完全着地する極東製をオーダー。荷台の両端に「あおり」がなく、荷台の寸法ぎりぎりまでクルマを積むことができます。

 さらに低床タイプの6センチの輪止め(純正は10センチ)の間隔を広げて設置し、ワイドトレッド車に対応。この結果、一般的なクルマはオフセットして積まなければならなくなったということで、まさにカスタムカー専用といったところです。

フロントスポイラー下端と荷台のクリアランスはわずか5ミリ

 筆者は4月24日に富士スピードウェイで行われたモーターファンフェスタ2022に向かう山本さんのダイナに同乗。積み荷はワイドボディ&シャコタンのGRヤリスです。

 積み込みの際は車外でリモコンを操作して荷台を後方に移動。荷台後端のスロープを下ろしたら、山本さんがGRヤリスに乗り込み、荷台に向かってゆっくり前進します。スロープとフロントスポイラーの隙間はわずか5ミリ程度。それでも山本さんは躊躇なくクルマを進めます。フロントスポイラーの幅は荷台の幅とほぼツライチで、左右ぴったりに収めるのは至難の業です。

 3回切り返しただけで、荷台のセンターに停車。フロントタイヤはしっかり輪止めにかかっています。コクピットに座ったまま、リモコンで荷台を元に戻したら、タイヤをハーネスで巻き付けて終了。通常、車両の固定はけん引フックを介して行いますが、山本さんは走行中のGRヤリスの揺れを考え、タイヤの外周にハーネスを巻きつけ、ばね下を固定する方法をとっています。

 余談ですが、このGRヤリスはホイールメーカー、レイズのイベント会場(レイズファンミーティング)に展示される出展車両。タイヤの外周を固定しているのは、レイズのホイールに傷をつけないための配慮でもあるのです。プロフェッショナルならではの判断ですが、カスタムカーの積載および輸送には、輸送とは本来関係のない、自動車業界の知識も必要です。

次ページは : 積み下ろしはあっという間に終了したが仕事は続く

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