クルマと道路は切っても切り離せないもの。交通ジャーナリストの清水草一が、毎回、道路についてわかりやすく解説する当コーナー。今回は老朽化で存続が危ぶまれる首都高速道路の羽田トンネルの対策工事について考察していく。
文/清水草一、写真/首都高速道路、フォッケウルフ
■渋滞の名所となった羽田トンネル
全国の高速道路で老朽化が進行し、その対策工事が行われているが、最初の開通から60年を経た首都高は、交通密度が高いぶん、老朽化の先進地域で、すでに5つの区間の造り直し(大規模更新)工事が実施中だ。
しかし、それが終わればめでたしめでたしとはならない。時間とともに否応なく老朽化は進行するから、修理が必要な個所は増えてゆく。
2023年末に開催された「首都高速道路の大規模更新・修繕及び機能強化に関する技術検討委員会」では、新たに1号羽田線「羽田トンネル」の造り直しの手順が公表された。
羽田トンネルは、羽田空港との間を流れる海老取川の河口をくぐるトンネルで、今年で開通60周年を迎える。60年前の東京オリンピックに合わせて、羽田空港と競技場、そして代々木選手村を結ぶ大動脈として首都高が建設された際に生まれた、日本初の海底沈埋トンネル(あらかじめ地上で造った「函(はこ)」を海底に沈める工法)だ。
もともとは橋を架ける計画だったが、航空機の妨げになる等の理由でトンネルに変更され、奇跡的な突貫工事により、オリンピックに間に合わせることができた。この逸話は、NHK『プロジェクトX』でも美談として取り上げられている。
ただその結果、羽田トンネルの前後は、かなりの勾配とカーブになった。特に上り線は、コークスクリュー的に左に曲がりながら下ってトンネルに突入し、今度は急な坂を上るため、自然と速度は落ちる。
しかもトンネル入口手前には、空港入口からの合流もある。羽田トンネル(上り)は、その後の交通量の増大によって渋滞の名所となった。近年は湾岸線からの合流により、下り線側の混雑が激しい。
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