今やあって当たり前の装備 オートマチックハイビームは万能なのか?

 ヘッドライトのロービームとハイビームは、それぞれの正式名称が「すれ違い用前照灯」と「走行用前照灯」と呼ばれるように、法規においてはハイビームが基本で、対向車や先行車がいるなど必要な場合にのみロービームを使うと定められている。

 しかし、それはヘッドライトの性能が低く、周りも暗く、クルマも少なかった自動車黎明期の話であり、現代の街頭などが増え、周りにクルマが密集している交通環境下においてハイビームを基本に走行することはなかなかできないというのが現実だ。

 それでも「明るく照射距離の長いハイビームをできるだけ使って、早めに周囲の情報を収集する」というのは適切にロービームとハイビームの切り替えができれば正しい行為であり、それを自動化したのがここ数年装着車が激増しているオートマチックハイビームなどと呼ばれるものである。

 当記事ではオートマチックハイビームを改めて紹介し、その是非などを考察していく。

文:永田恵一/写真:NISSAN、SUBARU、TOYOTA、LEXUS、HONDA、MITSUBISHI、AUDI、BMW、MERCEDES-BENZ、PEUGEOT、JAGUAR LAND ROVER、ベストカー編集部

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オートマチックハイビームの仕組みとは

2015年10月に日産デイズ/三菱eKワゴンがマイチェンを受け、軽自動車として初めてオートマチックハイビームを装備して以来、今ではほとんどの軽自動車が採用

 オートマチックハイビームはフロントガラスに置かれるカメラを使って対向車や先行車を検知し、オンにしておけばロービームとハイビームを状況に応じて切り替えてくれるというものだ。

 オートマチックハイビームに使うカメラは、自動ブレーキ&運転支援システムの情報収集源となる単眼カメラや人間の目のような2つのカメラとなるステレオカメラが兼ねていることがほとんどだ。

 そのため自動ブレーキ&運転支援システムが付いているクルマならオートマチックハイビームも付随している可能性は非常に高く、この点がここ数年のオートマチックハイビーム装着車の激増と強く関係している。

衝突被害軽減ブレーキなどの情報源となるカメラによって前走車、対向車、歩行者などの存在を検知してロー/ハイを切り替えるのがオートマチックハイビーム

オートマチックハイビームの種類

 オートマチックハイビームは大きくわけると2つに分類することができる。

■単純にロービームとハイビームを切り替えるもの
 こちらは前述したカメラが付くクルマであれば、安価なハロゲンヘッドライトのクルマでも装着可能だ。

■アダプティプタイプ
 アダプティプタイプのオートマチックハイビームは、「視界確保のため少しでも積極的にハイビームを使いたい」というコンセプトを持つものだ。

 ハードウェアにはヘッドライト自体に、「LEDの三眼タイプ」などといったきめ細かいロービームとハイビームの切り替えができるものを使う(そのためコストは高い)。

新型ハリアーはプロジェクターLEDと3灯式LEDの2タイプのヘッドランプをラインナップし、どちらにもAHSは装備されている

 具体的な作動は「先行車がいる場合には中央はロービーム、左右の端はハイビーム」、「対向車がいる場合には右側はロービーム、左側はハイビーム」といった具合だ。

 名称はトヨタではアダプティプハイビームシステム(AHS)、マツダではアダプティプLEDヘッドライト(ALH)など、各社で異なる。

レクサスRXは2019年のマイナーチェンジでブレードスキャンAHSをオプション設定。優れた性能を考えると7万1500円はお値打ち価格

 アダプティプタイプのオートマチックハイビームをさらに発展させたものとしては、2019年にマイナーチェンジされたレクサスRXにオプション設定(7万1500円)されるブレードスキャンAHSがある。

 ブレードスキャンAHSは高速回転する2枚のブレードミラー(リフレクタ=反射板)にLEDの光を照射し、光の残像効果を用いて前方を照射する方式だ。

 RXの場合はブレードミラーの回転に合わせて12個のLEDの点消灯を制御しており、従来のアダプティプタイプのオートマチックハイビーム以上にきめ細かい積極的なハイビームの使用を可能としている。

レクサスRXのブレードスキャンAHSの作動イメージ。単純にロー/ハイの切り替えではなく、必要な部分と不要な部分でチョイスして照射

オートマチックハイビームって万能なの?

 結論から書くと、自動ブレーキの性能がメーカーや車種によって大きな違いがあるのと同様に、オートマチックハイビームもその自動ブレーキのカメラが情報源になっているのもあり、「性能はクルマによって異なる」というのが実情だ。

 例えばつい最近暗い夜道で乗ったLEDライトで単純なオートマチックハイビームが付くクルマはロービームとハイビームが切り替わるタイミングに大きな不満はなかったが、「ロービームとハイビームが切り替わるタイミングとも遅い」というクルマもある。

写真上がロービーム、写真下がハイビーム。光量、光の拡散具合が大きく違うのは一目瞭然。照射距離はローが40m、ハイが100m

 ただアダプティプタイプであれば切り替えがきめ細かいだけに、不満を感じることは少ないという傾向はある。

 また2019年にJAFが行ったテストでは、テストに使ったクルマの性能も考慮する必要もあるにせよ、対向車の有無によるロービームとハイビームの切り替えでは大きな問題はなかった。

 しかし対向バイクに対するロービームとハイビームが遅い、自転車と歩行者に対してはハイビームからロービームに切り替わらなかったという結果もある。

 さらにオートマチックハイビームは最低でも15km/h以上のスピード域でないと作動しないものでもあるので、この点を見ても万能とはいえないのがわかる。

オートマチックハイビームはハロゲンタイプ、3眼タイプLEDだろうが、ロー/ハイを自動切替するのは同じながら、クルマ、メーカーによって性能は大きく違う

まとめ

 オートマチックハイビームは夜間の事故防止に貢献する装備ではあるが、天候や道路環境によっても正しく作動しないことがある装備である。

 それは自動ブレーキやほかの運転支援システムとまったく同じであり、装着車なら積極的にオンにしていいが、自動ブレーキや運転支援システムと同様に状況によって最終的な判断と操作は「ドライバーが行うもの」ということを頭においてほしい。

 最後になるが、オートマチックハイビームは、義務化されたオートライトとは別物なので要注意。

 ちなみにオートライトは周囲の明るさに合わせて自動でライトの点灯/消灯を行うシステムで、2020年4月から乗用車の新型車への装着が義務化された。なお、継続生産車については、2021年10月からの義務付けとなる。

 法制化されたことによって、走行時は機能をオフにできないことが明記されたため、夜間の走行時はヘッドライトを消すことができなくなった点が注意すべき点だ。

 これは夜間に無灯火で走っているクルマがいることに対する安全面の強化と言える。

 視界確保、安全というスタンスは同じだが、機能が違うことがお分かりいただけたと思う。

『オートライトの落とし穴』はこちら

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