2022年5月20日、日産は、リーフ、アリアに続く、量販EV第3弾となる軽規格の電気自動車「サクラ」を今夏に発売開始すると発表した。
日産副社長の星野朝子氏が「軽のゲームチェンジャー」とする今回の新型サクラは、リーフの開発で培った技術をフル投入し、最新の電動パワートレインと、最新のインテリアアイテムも盛り込んだ意欲作。
はたして、その実力はいかほどなのか? 神奈川県横須賀市追浜にある日産自動車GRANDRIVEで行われた事前試乗会で判明したサクラの全貌を紹介していこう。
文/吉川賢一
写真/佐藤正勝、日産自動車、トビラ写真(Adobe Stock@promolink)
■航続距離は180km、バッテリー容量は20kWh、BEVエントリーモデルとして裾野を広げることが目的
「軽の既成概念をサクラで覆し、BEVを普及させたい」という日産。サクラは日産のBEVエントリーモデルとして、裾野を広げることが目的であり、同日発表の兄弟車、三菱「eKクロスEV」のようにガソリン車の軽自動車、ekクロスのEV版といった戦略とはちょっと異なる。
ちなみに、この「SAKURA(サクラ)」というネーミングは社員から募集して決まったという。日本を象徴する花である桜に由来し、「日本の電気自動車の時代を彩り、中心となるクルマになって欲しい」という願いが込められているそうだ。
サクラをモチーフにした「隠れサクラ」をいくつかデザインに仕込んであるので、発見する楽しみもぜひ味わってほしい、とのことだ(日産サクラ・プロダクトマネージャー、Japan-ASEAN企画本部 商品企画部 日本商品グループ主担 鈴木理帆氏)。
日産の調査によると、ガソリン車ユーザーの1日あたりの走行距離は、半数以上の53%が30km以下、30kmから100km以下が31%、100kmから180kmが10%だという。このデータから航続距離を180kmとしておけば、途中の追い充電なしで、94%の方の日常シーンをカバーでき、また30km未満の方であれば5日に1度の自宅で充電でOK、と判断したそうだ。
むげにバッテリーを増やすことは「解」ではない。クルマの使われ方を真面目に調査し、20kWhという絶妙なバッテリー総容量におさめたようだ。
■アリアの末弟のようなエクステリア、インテリアも軽を超えた質感

エクステリアデザインは、東京モーターショー2019で登場したコンセプトカー「IMk」そのものだ。
デイズと共通するパーツは見当たらず、完全オリジナルとなる。発表会場ではサクラの横に同色ボディのアリアが並んでいたが、アリアの特徴を捉えたうえでそのまま縮小した、まさに「アリアの末っ子の弟」といった印象だ。
軽初となるプロジェクタータイプの3眼ヘッドランプを採用した薄型ヘッドライトや、格子をヒントにしたというワイドなリアコンビネーションランプも、ハイセンスでおしゃれ。
リアの「NISSAN」エンブレムも、立体文字の上にクリア板を被せており質感が高い。前後バンパーやホイールなど、ところどころに入った日本の伝統模様「水引」も、いいアクセントとなっている。車両右後方の充電ポートのキャップにまで、SAKURAロゴと水引模様が刻まれていた。

インテリアも、軽というカテゴリーを越えたクオリティ。7インチサイズの液晶メーターと9インチナビゲーションは、アリアやノートのように一枚板の上にレイアウトされている。よく見れば、2枚のディスプレイを並べただけなのだが、質感が良く感じられるのは、アリアやノート(ノートオーラ)の印象が良いからだろう。
ダッシュボード上やドアトリムに貼られたファブリックは手触りが良く、また、防水仕様となっているので、液体がこぼれても拭けばキレイに掃除できる。ステアリングホイールは、中間グレード以上だと「アリアと同じデザイン」の2スポークタイプとなる。表皮も上質で、これまたいいクルマに乗っている感覚を与えてくれる。
フロントシートは、ホールド性がやや少ないが、ソフトなタッチの優しいシートだ。後席も、デイズ譲りの前後ロングスライドが使えるので、居住性も抜群。
最後方まで後席シートを移動すれば、膝前にはコブシ4個分のスペースはある。その辺のコンパクトカーよりも遥かに広く、見た目で使い勝手の良さが想像できる。