現在、新車で販売されるクルマのうち、約98%が2ペダル車が圧倒的な占有率を誇っているのはご存知のとおり。
ATをはじめ、DCT(デュアルクラッチ)、CVTが2ペダルに該当するワケだが、そんな現状の新車販売ラインナップなかで走りが楽しい2ペダル車について、フォーカスを当ててみた。
そこで、自動車評論家3人に、走りの楽しい2ペダル車を選んでもらい、各車どんな魅力を持っているのか、解説してもらった。
文/国沢光宏 齋藤聡 松田秀士
写真/ベストカー編集部
初出/ベストカー2020年9月26日号
【画像ギャラリー】夢の2ペダルMTはなぜ主流になれない? DCTを搭載した日本車を写真でチェック!
軽く1000万円超えのクルマは別格扱いとした
まず、現在の国産ラインナップのなかで特に走りにこだわったモデルのうち、2ペダル車を用意しているモデルを表にまとめてみた。
このなかでもNSX、GT-R、レクサスLC、レクサスGS F&RC Fの5台については車両本体価格が軽く1000万円超えとなるため、走りが楽しくて当然として別格扱いとした。
国沢光宏が選んだ 走りが楽しい2ペダル車 国産車BEST5

単純な運転の楽しさだけならMT一択だけど、長距離や渋滞を考えればAT。毎日の通勤があって1台しか持てないなら必然的にATだね。
1位は誰でも「ホントかね?」と驚くリーフe+を挙げたい。このクルマの楽しさって、MTとは根本的に違う。どの速度域からアクセル全開しても、フルパワーで加速するのだった。それに加えてメチャクチャ速い!
なにせタイヤとサスペンションを替えただけで筑波サーキットを1分10秒! 下手なスポーツハッチじゃまったく勝てない。
2位はRAV4 PHV。2021年中盤には日産からARIYAが出てくるけれど、電気自動車はクルマの楽しさの基準を変えると思う。同じ意味でRAV4 PHVも新しい世代の楽しいATといっていい。
あんな大きいボディで0〜100km/h加速は6秒なんだから強烈。こうなるとシャッキリした足回りと高性能ブレーキも必要になってくる。
意外かもしれないが、V6エンジンを搭載するハイブリッドのパンチ力だって凄い。

3位に挙げたスカイラインはシステム出力364ps。4位のクラウンも同359ps! アクセル全開すると、純粋なガソリン車より早いタイミングでパワーが出る。レスポンス的にはクラウン優位。
ただ4WSに代表される車両全体の楽しさでスカイライン優位。この2車種、ハンドル握ってアクセル踏んだら「これは凄い」とウナりますよ。速いです。


5位はGRヤリスRS。新世代のスポーツCVTは、新しい走りの魅力を創り出すかもしれません。電気自動車ほどじゃないまでも、スポーツ走行モードにしておけば、常時最高出力回転数をキープできる可能性を持つ。
それだけだとエンジンが回りっぱなしになるため、10速制御になっている。遠からずスポーツモデルはモーター+エンジンの統合制御になり、当然ながらCVT。電光石火のレスポンスを楽しめますよ。
齋藤聡が選んだ 走りの楽しい2ペダル車 国産車BEST5

スポーツドライブはMTが一番と思っているが、そのいっぽうで高性能化した昨今のクルマでは、ATやCVT、DCTにシフト操作を任せてしまったほうが運転に集中でき、速くあるいは楽しく走れるということも否定できない事実。
その典型的なクルマがハイパワーFR。1位に挙げたスープラはRZ、SZ-R、SZいずれも楽しく、RZは速さだけでなく緻密にチューニングされたパワーフィールや6気筒ならではの、ある種重厚感のある操縦性が感じられる。
SZ-Rはシャープな吹き上がりとノーズの軽さからくる軽快な操縦性が特徴。SZはシャシーの素性のよさ、足回りの柔軟な動きが感じられ、煩雑なシフト操作をさぼれるぶん、集中して楽しむことができると思う。
2位のスカイライン400Rは、その絞り出すように発揮するパワーフィールが魅力。パワフルで鋭い吹き上がりを存分に味わえる。
操縦性は素直。ホイールベースが2850mmと長いので、全体に落ち着きのある身のこなしになっているのが感じとれる。

3位のフェアレディZは、大排気量NAのアクセルとエンジンが直結しているように感じられるダイレクトなパワーフィールが魅力。
エンジン自体も滑らかさよりも鋭さを優先した、やや荒っぽい味付け。けれども微細なアクセル操作に意外なほど素直に応答してくれるのだ。
ロードスターRFも走るのが楽しい2ペダルスポーツとして4位に挙げたいと思う。先のマイナーチェンジでエンジンがパワフルかつ伸びやかになって、エンジンの存在感がぐっと増した。
MTも文句なく楽しいが、案外ロールが大きいので、ATでハンドル操作に集中してRFの走りを楽しむというのも充分に魅力的な選択肢だ。

5位に挙げたRAV4のイチ推しはダイナミックトルクベクタリング付きの4WDシステム。
このクルマこそ煩雑なシフト操作に煩わされず、その複雑怪奇な前後左右トラクションを楽しんでほしいクルマだと思う。
松田秀士が選んだ 走りの楽しい2ペダル車 輸入車BEST3
走りを楽しみたいならMTだよね。MTを選ばないヤツはクルマ好きじゃないしと、ボクもそう思っていた。
でも、もうこれ都市伝説化しつつあるように思うのだ。だって、F1マシンも今や2ペダル。
あれは速さを追求した結果だけど、こぞって欧州メーカーがなーんちゃってF1パイロットが味わえるパドルシフト付きを販売。もうMTは古いとなったワケ。
で、MT育ちのボクが最近思うこと。MTの魅力は左手、右手、右足、左足のすべてがバラバラの操作を行う自己鍛錬型。
つまり、運転そのものがエクササイズ。これに対して2ペダルATの魅力は、余計なものをスキップしたダイレクト(直感的)ドライビングの魅力であると。
そしてATを楽しむなら左足ブレーキをマスターしてほしいと。アクセルからブレーキに踏み替える時、一瞬駆動が抜けてクルマは前のめりになる。
この時、リア荷重が抜けるけど、アクセルONにかぶせてブレーキを踏めばリア荷重が残せるから安定したブレーキングができる。
で、2ペダルATを選ぶなら多段化トランスミッションだね。メルセデスベンツA180(7速)、同A200d(8速)、新型プジョー208(8速)。
どれも6速が直結ギヤでそれ以上は燃費のためのオーバードライブだけど、シフトする楽しみはしっかりある。
3位に挙げたアルファロメオジュリア2.0もいい。受注生産だが500万円を切る。
しかもFRでフロントダブルウイッシュボーン/リアマルチリンクと走りに徹したサスペンションだ。
2ペダルの今後の主流は多段化AT? DCT? CVT?
TEXT/鈴木直也
最後に、今後、2ペダルの主流は多段化ATになっていくのか? それともデュアルクラッチのDCTか、CVTなのか? 自働車評論家の鈴木直也氏が解説する。
3つあるなかで今後、最も主流になっていくのはCVTであることは言うまでもない。今後、ますますモード燃費規制が厳しくなっていくなかで全開はほとんどなく、パーシャル領域で走行して低燃費を叩き出せるのはCVTだからね。
それはほとんどの軽やコンパクトで採用していることからもわかる。弱点である例のラバーバンドフィールはスポーツ走行をする人でなければ気にならないしね。
じゃあ、DCTはどうかというと、最近ではVWの乾式DCTなどはトラブルの多さから旗色が悪いよね。今後、世界的に減っていくだろうね。
でも、作り込まれたDCTのよさはサーキット走行時のトルコンが介在しないことによるダイレクト感、この変速の切れのよさはCVTにも多段ATにもない。
BMWのM2に積んでいる7速DCTなどは、そのフィーリングに惚れ惚れさせられる。400Nm超えの最大トルクを持ったスポーツモデルには、個人的にこれぞ究極のドライビングプレジャーだと思う。
で、最後に残ったステップ式多段ATだけど、街中でのなめらかな走行に加え、耐久性のよさ、そこそこのスポーツドライビングにも対応するなど、最もオールマイティな特性を持っている。CVTに次いでさらに増えていくだろう。